奇しくもそれは、ホテルの日。

日本で初めて横浜に、
ホテルがオープンした11月20日、
ぼくたちシネギミックは
2004年秋の上映会を開催した。

かつてホテルだった、その場所で。

(文責・松岡厚志)

 

 はじめに


名画を懐かしむ世代と、名画を新鮮に感じる世代。
それら異なる世代の人たちが、
ひとつの映画を同じ場所で体験する。

そんな企画意図にピッタリと選定されたのが、
ミュージカル映画『雨に唄えば』と、
旧甲子園ホテル(現・武庫川学院甲子園会館)
という会場だった。

「作品×場所」

この、映画鑑賞の可能性を引き出す
シネギミック独自の方程式は、
「初の本格的な屋内上映会」
という要素も加わって、
文化的な秋の季節に、そして観客の心に
確かな1ページを刻んだのである。

AUTUMN CINEGIMMICK 2004
「1日だけの映画館 in 旧甲子園ホテル」

まもなく開演。

 

 

 会場設営開始


午後12時半。
会場設営開始。

まずはリハーサルで計った通り、
寸分の狂いなく、イスを並べていく。


真ん中に通路を空ける感じで。



ひとつひとつ、丁寧に。


続いてスクリーンの設置。
手作りのものを上から吊るすとか、
会場レイアウトを逆にして
2階席から垂らすとか
様々な方策を巡らせたけれど、
結局、自立式の本格的なスクリーンを
業者さんからレンタルすることに。



教映社さん、ありがとうございました。



これくらい大きくなくっちゃね。


続いて、機材のセッティング。
予算や騒音の面から、
35mm映写機(映画館で使われるもの)
の使用は断念し、
プロジェクターで投射。



かなり高価な代物でして。



2階席で音響もセッティング。



開場前の、映写リハ。いい感じ。


上映会場の準備が整ったところで、
いよいよお客さんのご来場を待つ。

心臓はもう、バクバク。
果たして有料上映会に、
どれほどのお客さんが来て下さるのか、
そのときになるまで落ち着かないもので。

スタジオ・ジブリのプロデューサー
鈴木敏夫氏でさえ、こう言っている。

「公開前はいつもドキドキする。
 どんなにみんなに太鼓判を押されても、
 行ってみたらお客さんが
 三人しかいなかったらどうしよう…と」

ぼくたちのそれは、比ではなかった。

 

 

 お客さんが続々と


午後2時、開場。
その少し前からも、
ちらほらお客さんが来られていた。
準備を手際よく済ませておいて良かった。



いらっしゃいませ。



会場はこの奥ですよ。



ようこそお越しくださいまして。



当日客の方はこちらです。



ご予約された方はこちらです。


受付にて、当日プログラムと
各種案内物をお渡しする。
その後、上映会場入り口にて、
お菓子をプレゼント。
(お菓子については後述)



上映会場はこの先になります。
 

お気付きのように、スタッフは正装。
本職のコンシェルジェには敵わないが、
少しでもそれに近づけるよう、
「おもてなし」を徹底。

それもこれも、元はホテルだった場所、
の雰囲気を損なわない気配り。
むしろぼくたちスタッフは、
コンシェルジェの演技を楽しんでいた。

そして続々と会場入りする、お客さん。



どんどん埋まる。



どどんと埋まる。


さあ、いよいよ上映開始。
歴史的な刻は、もう間もなく。

 

 

 上映開始


午後2時半、上映開始。

上映開始というよりも、
「上演開始」の方が相応しいかもしれない。

拍手に迎えられ、不肖・松岡厚志、
一言ご挨拶をば。




「本日はシネギミック秋の上映会にお越しいただき、
 まことにありがとうございます」

続いて、こちら甲子園会館の
館長さんより、会場内のご説明。
この建物が、フランク・ロイド・ライト氏の愛弟子
遠藤新氏によって設計され、
いかに考えられた装飾を施され、
どれほど立派な素材を用いているかを
丁寧にご説明いただく。



見よ、この圧倒的な存在感。



和と洋の融合はお見事。



建物全体は打ち出の小槌がモチーフ。


その濃密な解説に、お客さんもうっとり。
ふむふむと頷くご年配の皆さまも、
この会場で映画を観る素晴らしさを
実感し始めていらっしゃるようで。

「それでは、いよいよ
 『雨に唄えば』を上映いたします。
 この旧甲子園ホテルで映画を観るという体験を、
 素敵な思い出にしていただければ幸いです」

さあ、Let's sing in the rain!

この日は快晴だったけど。

 

 

 上映中の一コマ


「お客として参加したかった」

スタッフのひとりは、本音を漏らす。
しかし「自分たちが参加したくなるイベント」
というのは、ある意味で理想型。

扉の奥から聞こえる、
上映中の『雨に唄えば』の音声は、
僕たちを羨ましがらせた。

そもそもにして、
「映画館をつくろう」と集まった僕たちこそが、
このような空間で、身近に、
映画を観たい想いが人一倍強い。

しかしそれには「パイオニア」の責務が伴い、
言い出しっぺがカタチにしていく義務がある。
いつしかノウハウだけを残し、
現メンバーが純粋にお客として参加する、
そんな日が来るとしたら、嬉しい。

もちろん「映画を見せたい」思いも、
人一倍、同時に強いのだけれど。

この上映中の合間を縫って、
お菓子とお紅茶の説明をしたい。

まずはこちら、
ライト洋菓子店からご提供のお菓子。
お客さんひとりひとりに手渡された。




ライト洋菓子店の「ライト」とは、
お察しの通り、
フランク・ロイド・ライトの
「ライト」から命名されている。

というのも、こちらのお店は
初代の方が甲子園ホテル時代に
製菓長を務めた経験があり、
ライト建築の魂を受け継いでいるのだ。



こちら、3代目の林田さん。


続いてこちら、北欧紅茶。
上映中に給湯室で準備し、
上映後に皆さんにお渡しする予定。


コップはこの日のために特別に用意。


この「北欧紅茶」は、
スウェーデン王室御用達。
ノーベル賞授賞式の晩餐会でも出される
由緒あるお紅茶。

世界のトップブレンダー、
バーノン・モーリス氏による
最高級のものである。

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スタッフが紅茶準備に奔走する頃、
僕はプレス対応に追われていた。

ケーブルテレビのベイ・コミュニケーションズさん、
朝日新聞阪神支局さん、
ご取材いただきありがとうございました。

 

 

 上映終了


「お楽しみいただけましたでしょうか」

ついに上映も終了。

70年前の建物で、50年前の映画を観る。
103分間のタイム・トラベルを、
みなさんはどのように感じられただろうか。

ここで、例の「ニュース」をご報告。
シネギミック史上最大の事件
口頭でご説明させていただいた。
 


株式会社フェリシモによる
「KOBE HYOGO 2005 夢基金プロジェクト」に合格した、
期間限定・1ヶ月だけの映画館 in 西宮。

そう、ぼくたちシネギミックは、
2005年5月、西宮市内に
期間限定の映画館をオープン
する。

そしてそこにはもちろん、
劇団・維新派からの授かりものである「歯車」を
壁面に飾る予定である。



いただいたんですよ、これ。


「改めまして、本日は
 お越しいただきありがとうございました。
 今後とも、シネギミックを
 よろしくお願いいたします」

閉会の言葉をもって、
秋の上映会はひとまず終了。

夕方5時までは「歓談タイム」ということで、
ライト洋菓子店のお菓子を食べつつ、
北欧紅茶で体を温めつつ、
映画について和やかに語り合う時間。



「どうでしたか、今日の上映会」



「この会場に相応しい映画でしたな」


みなさんにご記入いただいた
アンケートを回収しつつ…




会場の外では、
みなさんをお見送り。


「また来てくださいね」


こうしてシネギミック2004年秋の上映会、
「1日だけの映画館 in 旧甲子園ホテル」は
盛大な拍手と共に幕を閉じた。

ブラボーの声は聞こえなかったが、
それはおそらくみなさんが
『雨に唄えば』の余韻に浸っていたから。

♪I'm singin' in the rain,
 Just singin' in the rain〜

その音色と歌声は、
帰路に着くお客さんのステップを
軽やかにさせたに違いない。


みなさん、ありがとうございました。

またのお越しをお待ちしております。

 

 

 アンケートの結果


お寄せいただいたアンケートには、
好意的な意見で占められていた。

以下、代表的なご意見。

「 映画のセレクトはどうでしたか?」
・いやぁ昔の映画は侮れませんね!すごい良かったです。
・良い。「時計仕掛けのオレンジ」を観なおしてみようと思います。
・映画の話なのがよかった。
・ミュージカルが大好きなのでとても良かったです。
・満足以上です。
・何語で見ても楽しめる映画なので大好きな一本です。
・映画への愛にあふれた良い作品でした。
・初めて見ました。すごく良かった!
・有名な名画ですが今日初めて見ました。幸せな気持ちで胸が熱くなりました。ありがとう。
・初めて見たのですが素晴らしい。
・ホテルの風情とまっちしてすごくよかった。

 
「 会場のセレクトはどうでしたか?」
・見終わった後に戻る現実がこんなにゴージャス重厚な場所っていいですね。
・場所はいいですが寒かったです。
・思ったよりせまかった。
・珍しい建物だった。玉を触りたい。
・かっこいい。
・大大大満足。
・とても雰囲気が良く、映画を見るのにぴったりでした。
・又来たいです。
・一度入ってみたかった場所。
・非常に興味深い建物。
・会場と映画がぴったりでした感動しました。
・こんな形で旧甲子園ホテルに来れるなんてとんでもなく素敵です。ありがとう。
・会場が本当に素晴らしいです。
・甲子園口の歴史を調べた際とても気になっていたので大興奮でした。

 


その他に、
予約の手順についての感想や、
スタッフの応対について、
料金設定についてもお聞きした。

予約の手順については、概ね問題なし。
メール、ホームページのフォーム、FAXの
3通りを用意したけれど、
電話しか連絡手段がない方も
個別対応させていただいたので、
大きなトラブルはなかった。

スタッフの応対についても、不満はなし。

「受付で料金をお支払いした時、
 手を添えておつりをくださいました」

なんてご意見も。

料金については「高い」という意見が
そこそこ見受けられた。

シネコンのような「快適空間」ではなく、
映画鑑賞用に設計された場所ではないので、
同じ1800円には抵抗があるのだろう。

しかしながら、
お菓子もお紅茶もサービスされたし、
何より旧甲子園ホテルで映画を観るという
「付加価値」を考慮すれば「妥当」、
そんな意見がほとんどだった。

最後に、それぞれの項目を
5段階で評価していただいたものを
図にしてまとめてみた。


1.上映作品のセレクトに対しては?
2.上映会場のセレクトに対しては?
3.予約の手順に対しては?
4.スタッフの対応に対しては?
5.料金設定に対しては?
6.総合的に見て、今回の満足度は?


次回以降、
大いに参考にしていきたい。

 

 

 上映会を終えて


反省点は、たくさんある。

「歓談の間」をもう少し
話しやすい雰囲気に誘導すべきだったとか、
ホール内でのみ飲食可のお知らせを
口頭でし忘れてしまったとか、
最終的には赤字になってしまったとか、
改善点は山のようにある。

しかしながら、

「良かったです。
 重箱の隅をつつくような指摘しか
 できない程に良かったです。
 シネギミック フォーエバー」

という意見を掲示板にもらったけれど、
全体的に「悪くはなかった」ということで、
ひとまずは胸をなで下ろしたい。

予約されたまま来られなかった方もいて、
残念ながらあと一歩、
満席とはいかなかったけれど、
これだけ多くの方に集まっていただいて
ぼくたちは心底、嬉しい。

そして何より、
今回の上映会の特筆すべき点は、

「下は18歳から、上は84歳まで、
 年齢差66の方たちが
 同じ場所で同じ映画を共にした」

ということ。
これは、見逃せない。

ジェネレーションを超え、
ひとつの名画を一緒に楽しむ。
ぼくたちシネギミックが目指すべき
映画館の未来像が、ここにはあった。

また、スタッフの打ち上げ会場となった
甲子園口商店街のスナック「ペケチャン」で
たまたま居合わせたシネギミ会員の方からは

「本来、映画鑑賞というのは
 拍手がつきもの。
 お客さんから拍手をもらえるシネギミックは、
 その点をクリアしている」

とまでおっしゃっていただいた。

詰めの甘さはまだまだだけれど、
それは次回以降の宿題ということで。

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多大なるご協力をいただきました関係者の皆さま、
いつも応援してくださっている会員その他の皆さま、
そして当日お越しくださったお客さま、
本当に、本当にありがとうございました。

この日の映画体験を、
素敵な思い出の1ページに
加えていただければ幸いです。

ありがとうございました。

 

この日の経験は、
「1ヶ月だけの映画館 in 西宮」につづく。

 

by
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